2009年5月27日水曜日

本:Nudge


Nudge: Improving Decisions About Health, Wealth and Happiness (2008)

By Richard H. Thaler, Cass R. Sunstein


オバマ大統領も感銘を受け、大統領選にも役立てていたというこの一冊。

タイトル"Nudge"の意味は辞書にはこうあります。
「(名詞)軽いひと突き」とか「(動詞)ひじで軽く突く。~を少しずつ動かす」

続くタイトルには、「福祉、幸福に関する決定を改善する」とあり、この本は「行動経済学」という分野に属するそう。

この本は、「人は本来こう言われればこう動きがち」という行動原理の事例から、日々の生活でより良い選択(例えば、貯金の運用、環境保護、健康的生活)を人々にさせるためのコツの数々を示しています。

政策決定者にとっては、「市民にどのようによい選択を促すか」という視点で読むHow-to本に近いもののようですが、むしろ一般市民の私たちにとっては、知っておくと得をする人の行動原理が多く紹介されていて、「何気ない日々の生活でより良い選択肢を選び、間違えを防ぐ手がかり」が得られます。

<筆者>
両者ともに、オバマ大統領が教鞭をとっていたシカゴ大学で、同じく教授であった(である)。

筆者:
(写真左)キャス・サンスティーン
ハーバード大学ロースクール教授。

オバマ政権のアドバイザーとして、行政管理予算局(Office of Management of Budget)の中の情報規制対応室(Office of Information and Regulatory Affairs)にノミネートされており、現在(2009年5月)上院で任命の承認がされている。

(写真右)リチャード・セイラー
シカゴ大学ビジネススクール教授。




<なるほど!>

まだ半分ほどしか読んでいませんが、「ははー、確かにそうだ!」と思った事例が色々でてきました。(以下、日本語版はないので私の仮訳。)

事例1「自分が既に持っている物を失う悲しさは、同じ物を新しく手にいれる喜びの2倍である。」
----- ある大学でクラスの半数の生徒が、大学のロゴ入りのマグカップをもらった。その後、もらえなかった生徒は、マグカップをもらった生徒から買うための値段交渉をしてみるよう支持をされた。多くの場合、最初に手に入れた生徒は、これから買おうとする生徒の提示するおよそ2倍の値段を求め、同意に至らなかった。一度自分の手に入れたマグカップは手放したく価値の高いものだが、もともと持っていなかったのであれば、それほどの価値を感じないことになる。
(第1章:先入観と大失敗)

事例2「ディナーパーティーで、ワインのおつまみは少ない方が感謝される。」
----- 筆者のセイラーがパーティーを開いた時のこと。1本目のワインをあけた時に、大きなお皿にカシューナッツのおつまみを出した。すると、しばらく皆の手は止まらず、大きなお皿を開けてしまう勢いだった。そこで、セーラーはナッツのお皿をキッチンに下げてしまった。キッチンから戻ると、ゲストらは「おいしい料理が準備される前に、大量のカシューナッツでおなかをいっぱいにしてしまうところだったよ」とセイラーに感謝を述べた。
(第2章:誘惑に抵抗する)


事例3. 「税金回収率を上げたいなら、『皆も払っているのだから』と市民に促す。」
----- ミネソタ州の調査では、税金支払いを市民に求める呼びかけを以下4つの方法で行ったところ、最も効果のあったのは(4)であった。
(1) 税金は教育、警察保護、防火管理など社会のためにしようされています。
(2) 税金を支払わない場合は、罰せられる危険性があります。
(3) 納税申告書の書き方が分からない場合は、教えます。
(4) ミネソタ州の90%の人が、税法に従って既に申告しました。
(第3章:周りの群衆に従う)

事例4「電化製品の有料保証はほとんどの場合つけるべきではない。」
 ----- 例えば、$200の携帯電話を買って1年目は無料で保証がついているが、2年目は+$20であるとする。この場合、仮に2年目に1%の確立で故障するとすれば、$20の保証からカバーされるのは平均$2($200の1%)となる。そして、残りは携帯電話会社の儲けとなる。
(第4章:背中を押してもらう必要があるのはいつか?)

事例5. 「避妊薬「ピル」の28錠セットの、22-28錠目は儀薬である。」
 ----- ピルは3週間分(21日目まで)飲んで、4週目は飲まずに空けるべきもの。しかし、飲み忘れを防ぎ、毎日飲むことを習慣付けるために、本当は飲む必要がない4週目の分も成分を含まない儀薬を作り、毎日飲むように番号を振った入れ物に入れてある。
(第5章:選択の設計)

2009年5月1日金曜日

映画: スティーブン・キングの作品

ホラー小説家 スティーブン・キング(1947年、米国メイン州出身)

彼の作品を基にした映画を
この1週間に4つ見ました。

まだ悪夢はみていません。

彼のノンフィクション作品
On Writing: A Memoir of the Craft
(1999)で、
彼の生い立ち、それぞれの作品が書かれた背景など読んだ後だったので、
「ほう、あの経験がこのストーリーラインを生むなんて」と思いながら見ました。

見たのはこの4つ。

「キャリー(1976)」 原題:Carrie

体育の授業の後、キャリーがシャワー室で初潮を迎えるシーンから始まる。周りの女子生徒から馬鹿にされ、ナプキンやタンポンを投げつけられ、先生にやっと助けだされる。

いじめられっこのキャリーは、不思議な力を持っていた。彼女の怒りは、物体を動かし破壊する力を生むのである。

ある日、皆にいじめられる彼女に同情した女子生徒が、ボーイフレンドに、高校最後のダンスパーティーへキャリーを誘って一緒に出てあげてと頼む。

しかし、いじめっ子が会場で仕組んでいたいたずらはなんとも卑猥な行為であった。

ケリーの怒りは想像もつかない結末を呼ぶ。


「シャイニング(1980)」 原題:The Shining

コロラド州のロッキー山上のホテルが舞台。

小説家であるジャックは、執筆活動の傍らできる
ホテルの管理人の仕事をするため、妻と幼い息子ホテルに移り住む。

息子のダニーには不思議な力があり、見えない物が見えたり、人の心が読めたりする。そこで、ダニーがホテルで見たものは、階段から流れ出る大量の血や、双子の姉妹が斧で殺害された遺体など。

実は、このホテルでは、前の管理人が斧で家族を殺害していたのである。

そんな呪われたホテルで、孤独な執筆活動を送りながら、ジャックも化け物を見るようになり、狂乱していく。そしてとうとう、彼も斧を手に取ってしまうのである。


「ペット・セメタリー(1989)」 原題: Pet Semetary

メイン州の田舎町が舞台。

幼い娘と息子を連れた一家が引越した先は、ダンプカーの往来が激しい道に面していた。そして、家の隣には不気味な動物墓地が。

ある日、娘の愛する猫がダンプカーに
引かれて死んでしまう。隠そうと必死の父親は墓地を管理する隣人から、ある場所に埋めるよう言われる。
その通りにすると、なんと翌日その猫が生き返って表れた。しかし、猫は恐ろしく暴力的に変容していた。

ダンプカーの往来はやむ事がなく、ある日幼い息子の命も奪ってしまう。そこで、悲しみにくれた父親は、ある夜遺体を墓の下から例の場所に埋めてしまう。生まれ変わった息子に再開できた父親とその家族に待っていたのは。。。


墓地での葬儀のシーンで一瞬、スティーブン・キングが牧師として出演しています。


「ゴールデンボーイ(1998) 」 原題:Apt Pupil

高校で優等生のトッドは、歴史の授業からホロコーストに興味を持つようになる。

図書館で文献をあさると、近所の老人がユダヤ人のガス室大量殺害を行っていた元ナチス兵であったことを突き止める。

学校では詳しく教えられない、恐ろしい真実を本人の口から全て聞きだしたいと考えたトッド。「語らなければ元ナチス兵であることを周りに口外する」と脅し、その詳細を毎晩語らせた。

トッドは、この異常なほどのホローコーストへの固執がもとで事件への巻き込まれていく。


この中で、トッドが殺害してしまうこととなるホームレス男性は、なんとLaw and Order Special Victims Unit の英雄刑事エリオットだったからびっくり。


この4つの作品に共通していることは、いずれも主人公が子どもであって、アメリカの良くありそうな場所(メイン州の田舎町、コロラド州のホテル、郊外の高校)が舞台となっていること。

上記のOn Writingでは、スティーブン・キングが貧しい子ども時代を母・兄と過ごした時の、様々な出来事がかなり鮮明に書かれています。彼の考える「子どもの敏感さ」が、それぞれのホラー作品に表れている感じがします。

それから、彼は幼いころに友人が電車に挟まれて亡くなったのを目の前で目撃したそうです。
自身は覚えていないらしく、作品への影響も否定しているそうですが。

スティーブン・キングは、「モダンホラー」(怪奇小説でなく)の第一人者とされているとのこと。
普段あまりホラー映画を見るわけでなく、「モダンホラー」の定義も分かりませんが、
ゾンビが出てくる映画とか、日本の「らせん(1998)」、「呪怨(1998)」とかで、怖いお化けがでてくるのとは違って、ストーリーの展開自体が恐ろしい感じです。

スティーブン・キングが書いたホラー以外の作品も、有名どころの「ショーシャンクの空に」「グリーンマイル」など、もう一度見てみようかと思っています。

それから、スティーブンキング作品週間を終えたところで、夫がふと小さいころに氏を見かけたことを思い出しました。彼のいとこがメイン州でスティーブン・キングの娘と同じ大学に通っていて、
卒業式を見に行ったらキング氏も来ていたとか。誰かが騒ぎ出したので、途中で退室していった姿しか見ていないそうですが。