2009年8月22日土曜日

カウンセラーと国家資格

職業がら、疑問に思っていることがありました。
県や市や民間で相談員の仕事をしている人がいます。例えば夫からのDVや、離婚、からだの相談、子どもの引きこもり、子育ての悩みなど色々相談にのってくれます。彼女(彼)らは、「臨床心理士(カウンセラー)」や「社会福祉士」の資格を持っている人がいたり、また資格はなくてもカウンセリング業務を長年やっている人がいたり。

その中で、「カウンセラー」の位置づけについて、
しばらくもやもや疑問に思っていたことが明らかになったので書いておきます。

<アメリカとは違う?>
アメリカのNGOで、ソーシャルワークをしていた時、口すっぱく「カウンセリング的な業務はカウンセラーでない者は絶対に行ってはいけない」と言われてました。「心理の問題を扱うことはセンシティブな業務で、資格がない者が行うべきではないもの」と理解していました。

それから、日本で同分野に足を踏み入れてみると、その辺の境界線についてあまり聞きません。
それどころか、臨床心理士と私(資格なし)が、同じ業務を行っています。なぜなのー??

<国家資格と業務/名称独占資格>
その理由の一つは、臨床心理士は国家資格でないこと。
臨床心理士は、
財団法人日本臨床心理士資格認定協会が認定する民間資格。
国家資格で、且つそれが業務独占資格であれば、その業務を行うことが法的に許されるのは資格保有者のみとなります。
例)業務独占の国家資格:弁護士、医師、公認会計士、美容師、はり師 他
よって、カウンセリング業務は「臨床心理士」やその他「認定カウンセラー」以外の人が行ってもよいことになっています。

おやおやと思うのですがその一方、同種の業務を行っている、
精神保健福祉士、社会福祉士は国家資格。
それでもこれらは、
名称独占資格なので、資格のない人が同業務を行うこうことが許されています。
保健士、栄養士、介護福祉士などもそう。


<なぜ臨床心理士は国家資格でない?>
認知度も上がってきている臨床心理士。例えば、2001年度に制度化されて現在全公立中学校に配置されることになったスクールカウンセラーの多くが臨床心理士。
精神保健福祉士、社会福祉士は国家資格なのに、臨床心理士はそうでない2007年時点で約1万6千人の臨床心理士)。

その大きな理由は、医師団体が彼らの業務を独占していたいから。
現在カウンセラーと近い業務を行う精神科医は、医師としての国家資格を持って
業務を独占しています。そこに、臨床心理士が入り込んできたら、同じく国家資格をもつ彼らにもそれなりの待遇を保証しなければならないし、業務間の調整も行わなければならなくなります。

これまでに、臨床心理職の国家資格化に関して、旧厚生省や国会で話し合われてきましたが、上記のような理由で何度も議論が頓挫しています。2005年に立法化直前まで行ったのに、日本医師会、日本精神科病院協会、日本精神神経科診療所協会、日本精神神経学会などの強い反対により、立法化に至りませんでした。その裏には、医師会と自民党の強いつながりがあるということ。民主党が政権を握れば、状況は変わるのかもしれないですが。

<アメリカのカウンセラー位置づけ>
やはり、日本よりもその業務独占が保証されているようです。
アメリカの心理専門家の中では、クリニカル・サイコロジストとその他カウンセラーが明白にすみわけされているようです。前者は大学院博士課程を修了した者で、州立資格を得た上で開業できる制度になっています。クリニカル・サイコロジストは病院やクリニック、公的機関における心理療法の業務を独占をしているということ。アメリカであるからこそ州ごとに登録する資格になっているが、日本でいえば業務独占を保証する国家資格にあたるということでしょう。

もやもやしていた疑問がなくなり、すっきりしました。

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